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免疫相談室:うつ

免疫相談室

うつ

Q

過労と経済不安からうつに。今後の生活が不安です。 (41歳/男性)

不況のあおりで職場の売上が減少し、同僚の多くがリストラされました。仕事の時間は激増するうえに、給料は下がる一方でした。5年前に購入した住宅のローンが家計を圧迫しているうえに、長男の高校進学と長女の中学進学を控え、教育費の負担も増えています。

妻のパート収入で家計を補填し、私は許される限りの残業をしていますが、働いても働いても給料は増えず、家計のひっ迫した状況は変わりません。

同僚に愚痴をいっても、「いまの世の中、働けるだけで上等」といわれるばかりです。たしかにそうだとは思うのですが、日々の苦しさからつい弱音を吐いてしまいます。

それでも自分なりには頑張ってきたつもりでしたが、あるときからなにごとにもやる気が出ず、激しい脱力感、めまい、吐き気が続くようになり、病院で「うつ病」と診断されました。ここ半年ほど休職中です。

抗うつ剤は効くような、効かないような感じで、よくわかりません。はじめはひどく眠くなりましたが、二週間ほど経つと眠気は少なくなりました。ただ体は重く、だるい感じがします。

不思議なのは、なぜかイライラすることが多いということです。抗うつ剤というのは、神経を休めるものではないのでしょうか? 担当の先生は、「焦るとイライラするから、ゆったりかまえましょう」といいます。薬の量はじりじりと増えています。

私には一刻も早く復職したい気持ちと、「病気になる前と同じように働けるだろうか?」という不安があり、それでイライラするのかもしれません。薬をやめて復帰への糸口をみつける方が、いいのかとも思います。

今後の生活を考えると何一つ希望が見えません。治療のことを含め、身の振り方についてアドバイスをお願いします。

A

ストレス要因を減らし、体を温めましょう。

増え続けるサラリーマンのうつ

うつ病は、憂うつが強く、気分が激しく落ち込む状態が続いて、物事万事に興味がなくなり、なにかをやろうとする意欲も失ってしまう病気です。

「どうせうまくできっこない」「私は価値のない人間」など自己評価が低くなると共に、焦燥感や不安感も強くなります。

精神症状だけでなく、食欲低下、不眠、便秘、性欲の減退、発汗、寝汗、手足のしびれ、肩こり、頭痛、腰痛などの複数の身体症状も伴います。不調を感じて病院で検査を受けても、器質的な異常はみつかりません。

うつは心身に強いブレーキがかかった状態です。そのため、筋道を立てて考え事をしたり、考えたことを行動に移すことが困難になります。患者さんはますます自信を喪失して落ち込み、仕事に行けなくなったり、家事ができなくなったりするなど、日常生活にも支障をきたすようになります。

治療には精神療法と薬物療法があります。うつ病の原因は、脳内の情報伝達で重要な役割を担うセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の低下が有力視されています。そこで、セロトニン、ノルアドレナリンの利用率を上げることを目的に、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害)などの抗うつ剤が用いられます。

厚生労働省の調査(※1)によれば、日本人は一生のうちで約5人に1人が、過去12カ月間では約50人に1人がうつ病を経験していることが明らかになりました。医療機関を受診していない人を含めると、実際にはこの数倍の人がうつを経験しているものと思われます。

サラリーマンのうつも増加の一途をたどっています。民間調査機関が2010年4月6日から5月17日にかけて行ったインターネット調査では(※2)「心の病で、1カ月以上欠勤・休暇している社員がいますか?」という質問に対して、「いる」と答えた企業は63・5%と6割を超え、「いない」の34・9%を大きく上回りました。

※1 『地域におけるうつ対策検討報告書』平成14年
※2 労務行政研究所『企業のメンタルヘルス対策に関する実態調査』。調査対象上場企業3589社、上場企業に匹敵する非上場企業328社。このうち252社から回答があった。

経済問題の解決は第三者に相談をあおぐ

二〇〇八年秋の「リーマン・ショック」以降、正規雇用のリストラや派遣切りが加速しました。「いつ解雇されるかわからない」という雇用不安、失業期間の長期化、収入の激減など経済不安が、うつを発症させる背景になっています。あなたも、まずは経済的な問題から徐々に解決していくことが先決です。

家計がひっ迫している中で休職せざるを得ないというのは、さぞ苦しいと思います。問題は山積していますが、うつという状態では、冷静な思考はとうていできるものではありません。自分一人で解決しようとはせずに、経済問題も含め、ソーシャルワーカーなどの公的窓口に一度相談してみてはいかがでしょうか。

誰もが雇用不安を抱えている現在、公的機関が設置したセーフティーネットも数が増えています。お近くの地方自治体の出張所で問い合わせたり、インターネットで調べたりして情報を集めましょう。

ご家族のことやマイホームのことなど、守るべきものは多く、それがまたご苦労の種になっていることと思います。物心両面の負担を軽減するためには、「削れるものはなにか?」を、ご夫婦で考えてみることも大切です。

もしマイカーをお持ちなら、それを売却してレンタカーを活用するという方法もあります。

最寄りの駅への移動手段を車からバスや自転車に代え、片道15分ていどの所は徒歩にするといった工夫をすれば、健康にもプラスになります。

マイホームは今後のローン負担を鑑み、思い切って手放してしまうのも一案です。実家を頼ることができそうなら、ご両親と住むのもよいですし、借家に切り替えるのもよいでしょう。

夢のマイホームを手放すのは非常につらいことです。しかし、健康を回復するには、目の前にある経済的な圧迫から自由になる必要があります。こうして少しずつストレス要因を減らしながら、次に述べるように体の手当をしていくことも大切です。

最終的には抗うつ剤をやめる

うつ病の治療ではカウンセリングが欠かせませんが、現行の保険制度では自費診療でなければ十分なカウンセリングは受けられません。いきおい薬物療法の比重が高くなり、患者さんは心の悩みを解消できないまま抗うつ剤を長期服用することになります。

患者さんの落ち込みが強く、「死にたい」という希死念慮が危惧される場合は、一時的に抗うつ剤を使用するのはやむを得ません。しかし、薬物療法はあくまでも対症療法です。うつの薬物治療では耐性ができやすく、薬を増やすことで対処しようとする医師が少なくないのです。あなたの担当医がどのような方針かわかりませんが、薬が増えているということですから、今後の治療には一考を要します。医師には、最終的に薬をやめたいことを伝え、減薬について相談されてはいかがでしょうか。

抗うつ剤というと、落ち込みを緩和したり、心を平静にする薬のようなイメージがありますが、それはちがいます。抗うつ剤は交感神経を緊張させることで、感覚を麻痺させ苦痛や不快感を感じにくくさせるのです。

あなたがイライラするようになった原因は、まさに薬にあるのです。薬物療法を受けているうつ病の患者さんの相談をうかがうと、心の平和とはほど遠い治療の流れに入っています。参考になると思うので、45歳のOLの方のケースを紹介しましょう。

この女性は、激務が続いたことからうつになり、専門医から抗うつ剤を処方されました。5カ月ほど経ったころから、些細なことでカッとしたり、イライラしたり、家族や友人の言葉に猜疑心がわいて不安感が強くなったりしましたが、それはうつ病のせいだと思っていたそうです。

しかしある日友人から、「最近、怒りっぽくなったね。いつも顔色も悪いし、大丈夫なの?」と言われたことから、女性は薬の副作用ではないかと考え、うつ病の専門医である担当医に相談しました。すると、「まあ、そういう副作用も多少はあるかもしれないね。じゃあ、別の薬を出しておくから」の一言で終わってしまったというのです。

女性は医師の言葉でハッと目が醒め、「このままでは薬漬けになるだけだ」と気づき、薬を一切飲まないと決意し、自費診療のカウンセリングを受けることにしたそうです。そこで、私は女性には、仕事を休んで、徹底して体を温めるアドバイスをしました。その後、数カ月に1度くらい経過報告があり、3カ月後の電話では、「薬をやめて体を温めるようになってから体調がよくなった」、半年後には「うつがかなり改善した」、1年3カ月後には「カウンセリングも卒業して、職場に復帰した」とのことでした。

この女性のようにいきなり薬をやめるとなると、気持ちが落ち込むなどのつらさも相応にあるので、できればカウンセリングを受け、心のつらさを打ち明けながら養生することが望ましいと思います。経済的にカウンセリングに通えない場合も、公的な心理相談の窓口に相談してみるといいでしょう。薬は徐々に減らし、最終的にはゼロにするという方法でもいいのです。一時期、落ち込みが強くなるかもしれません。体を動かすのもおっくうになったら、カイロ、湯たんぽなどを活用して温め続けましょう。

うつの治療には体を温める

現代医学では、うつの原因として、セロトニンやノルアドレナリンなど脳内の神経伝達物質の不足をあげています。これらの脳内物質は、意欲や活力などを伝達する働きがあるため、不足すると憂うつ感を招くというものです。しかし、私はこの憂うつ感の原因は低体温であると考え、治療の柱は体を温めることだと思っています。うつの患者さんの治療にあたっている治療家も、「うつの人は、例外なく極端に体が冷えている」といいます。

「体が冷えると、心も活力を失う」
このしくみは、ミトコンドリアのエネルギー生成系で説明することができます。

脳神経細胞は心筋や赤筋と並んでミトコンドリアが多い場所です。脳は生命活動をコントロールする中枢なので、活動を停止することはありません。眠っているときに夢を見たり、物音や地震でハッと目が醒めたりするように、脳は眠りからさめてすぐ活動できるようになっています。

このように脳が常に一定の待機状態を保つことができるのは、ミトコンドリアが絶え間なくエネルギーを供給しているからです。もちろんミトコンドリアも、休みがなければ疲れてしまいます。そこで、1日のうち一定時間睡眠をとることで休息をとるのです。

ストレスは、ミトコンドリアの働きに影響を与えます。

ストレスがかかると、闘争心が強い人や頑張り屋さんは、ストレスに負けまいと発奮します。このように心のスイッチが交感神経側に入る人は、強い興奮状態を維持するために、ミトコンドリアが活性化します。一方、不安や怯えを抱きやすい人は、ストレスがかかると耐えきれずに落ち込み、睡眠もとれなくなります。こうなると、休息がとれないミトコンドリアの機能は徐々に低下していきます。

交感神経緊張型の人は血管がたえず絞られているために血流障害を起こし、副交感神経優位型の人は血管が開き過ぎて、血液が停留することで血流障害を起こします。血液の流れが悪くなれば低体温になります。低体温、低酸素が続けば、ミトコンドリアは生命活動に必要な栄養素が作り出せなくなり、脳の活性が低下します。こうして心の元気が失われていくのです。

心を元気にするには、ミトコンドリアに元気になってもらうことが大切です。体を十分に温め、深呼吸をしてたっぷり酸素をとりいれると、ミトコンドリアが活性化して、心の不調も治すことができます。

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